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板金溶接の基本知識

〜種類・技術・事例から最新設備・未来展望まで徹底解説〜

板金と溶接とは

板金とは、主に金属の薄い板を「切る」「曲げる」「穴を開ける」「溶接する」などの加工を加え、目的どおりの形状・機能を持たせる工法です。「加工された金属板」自体も板金と呼ばれます。機械・装置カバーや筐体、構造部品など、私たちの身近な製品の多くが板金に基づき設計・製造されています。

一方、「溶接」とは金属の接合手法のひとつです。高温で母材(金属同士)を部分的に溶かし、融合させることで強固な接合を実現します。溶接には様々な方式があり、母材の組合せや目的に応じて使い分けます。


板金溶接とは

板金溶接とは、上記の板金加工で成形した金属板同士、または板金部品と他部材を溶接作業で結合する工程です。架台やカバー、制御盤筐体など、設計要件・強度・美観を問われる装置部品の製造現場では必須のプロセスです。産業用装置分野を中心に広く活躍しています。


板金溶接のプロセス

通常は以下の段階で進みます:

  1. 材料選定

  2. 切断・加工

  3. 仮付け

  4. 本溶接

  5. 仕上げ(研磨など)

溶接では、部材同士を正確に組み立て、歪み・変形を最小限に抑える慎重な技術が求められます。


主な板金溶接技術

  • アーク溶接:アーク放電による熱で溶かす一般的な方法

  • TIG溶接:タングステン電極&保護ガスによる精密溶接

  • CO₂溶接:CO₂ガス中でのワイヤ送給による効率溶接

  • スポット溶接:重ねた薄板を通電・加圧して局所加熱する抵抗溶接

どの技術にも「加熱」「接合」「冷却」という基本原理が共通しており、各要素が製品品質(強度・外観・コスト)に大きく影響します。


板金溶接の重要性

産業界における役割

板金溶接は、幅広い分野で製品・設備の根幹を支えています。
産業用装置、制御盤、建設資材、家具、電子機器、調理機器、看板、産業什器・ラック、小型乗り物、電気機器部品など、多様な業界でなくてはならない工程です。

品質と耐久性への寄与

板金溶接による一体構造は、ネジ止めやリベット止めに比べ強度が高く、耐久性にも優れます。振動や応力に対しても高い信頼性を発揮。仕上げ研磨で美観や安全性も確保可能です。

コスト削減への貢献

複雑な形状や大きな部品を一体的に製作・組立することで、部品点数の削減、工程短縮、コストダウンを実現できます。
例:ある産業用検査装置の架台フレームでは、高張力鋼板の板金溶接により従来方式に比べ約30%軽量化、40%コストカットに成功(出典:板金加工事例集 工業通信 2022年版)。


板金溶接の種類

融接法

接合部分に高温の熱を加え金属自体を溶かし、その後冷却して一体化させる方式。アーク溶接・ガス溶接・レーザー溶接など。

  • 母材同士が完全に融合 → 最も強い接合

  • 複雑形状や大型部材、高荷重の場合に有効

  • 対応材料:鉄、ステンレス、アルミ、銅合金

ろう接法

母材を溶かさず「ろう(溶加材)」のみを融かして接合。

  • 母材への熱影響が少ない → 変形・焼損のリスクが低い

  • 異種金属接合に有効(例:真鍮+ステンレス、アルミ+銅)

圧接法

金属部品同士を高圧で密着させ、必要に応じ熱や電流を加え融合。

  • スポット溶接やプロジェクション溶接など、量産現場で多用

  • 薄板の寸法精度・生産スピードを両立可能


代表的な溶接技術

アーク溶接

母材と電極棒の間にアークを発生 → 金属を溶かして接合。

  • 高温(5,000℃以上)で強固な接合

  • 幅広い材料・形状に対応

  • 大物部材や骨組みに多用

TIG溶接

非消耗性タングステン電極+不活性ガスで精密溶接。

  • 薄板・精密部品・曲線の溶接に最適

  • 見た目の美しい仕上がり

  • 熟練技術者が必要

CO₂溶接

ワイヤ電極+CO₂ガスで半自動・自動溶接。

  • 高効率・高強度

  • 薄板~中厚まで幅広く対応

  • 自動化ラインで生産性向上


板金溶接のプロセスと安全対策

準備作業の重要性

  • 適切な素材選定(SS/SUS/アルミ/銅)

  • 設計意図・荷重・熱変形を理解

  • 保護具・治具・換気・防火設備の準備

  • 作業場の整理整頓と道具配置

事前準備の良否が品質の80%を決定します。

溶接実施手順

  • 溶接機の設定(電流・電圧・シールドガス)

  • 材質・厚みに応じ最適技術を選択

  • 仮組み・汚れ除去・安全確保

検査と評価

  • 外観検査(クラック、溶け込み不足、ピンホール)

  • 必要に応じ強度比較、引張試験、破壊試験

  • 記録・データ蓄積で次回以降の品質向上


メリットとデメリット

メリット

  • 高強度・高耐久性

  • 幅広い材料・形状に対応

  • 部品点数・組立工程削減 → コスト低減・リードタイム短縮

デメリット

  • 専門技術・経験必須

  • 熱による歪み・変形リスク

  • 設備導入・教育コストが高い

デメリットは「自社一貫体制」や「工程内自動化」である程度解消可能。


最新技術と未来展望

ロボット溶接

  • 自動化で作業効率・品質均一化

  • 精度向上、コスト削減、省力化

AI技術

  • 溶接条件・強度をリアルタイム解析

  • 故障予知、品質記録を活用した最適化

持続可能な溶接技術

  • 省電力・省資源設計

  • 高効率インバータ溶接、レーザー溶接

  • リサイクル材料活用、CO₂排出低減


まとめ

板金溶接は「材料選定~加工・溶接・評価~最新設備導入・安全対策・未来展望」まで幅広い要素が複合する、ものづくりの核です。

株式会社ファイネスでは、ステンレスをはじめとする板金加工・機械加工から装置組立までを自社工場一貫生産体制で提供し、品質・納期・コストのすべてで最適ソリューションをお届けします。