ステンレス研磨の基礎から実務まで:最新の技術を紹介
ステンレスとは何か
ステンレス鋼は、鉄を主成分にクロム(Cr)を最低10.5%以上添加し、不動態皮膜を形成させた合金です。さらにニッケル(Ni)やモリブデン(Mo)、チタン(Ti)などを配合した多様な系統があり、耐食性・耐熱性・強度特性を調整できます。
主な用途:
食品機械部品(タンク、搬送ローラー)
厨房機器(シンク、調理台)
医療機器部材(フレーム、カバー)
建築装飾金物(手すり、パネル)
埼玉県飯能市の自社工場では、板金加工から機械加工、装置組立まで一貫生産を行い、これらの用途に最適なステンレス部品を提供しています。
ステンレスの組成と特徴
ステンレス鋼は、大きく3つの系統に分類されます。
オーステナイト系(SUS304、SUS316など)
ニッケル配合で耐食性・延性に優れ、食品・医療機器に多用。
フェライト系(SUS430など)
クロム主体の低コスト材。磁性を持ち、自動販売機パネルなどに適用。
マルテンサイト系(SUS410など)
高強度で耐摩耗性が高く、歯車や刃物部品などに使われる。
各系統とも化学組成と熱処理で特性が変化し、用途に応じた材質選択が重要です。当社では板厚や製品形状を考慮し、最適なステンレス鋼を選定しています。
ステンレスを研磨する理由
ステンレス部品の研磨には、以下の目的があります。
表面平滑化:切断・曲げ加工で生じる凹凸傷を取り除き、滑らかな面を作る。
耐食性向上:微細な溝や突出部に汚れが溜まることを防ぎ、不動態皮膜の再生を促進。
美観確保:ヘアラインや鏡面といった外観仕上げで製品価値を高める。
衛生管理:凹凸を滑らかにし、洗浄・除菌性を向上。
食品搬送装置や厨房機器では、日常的な洗浄・消毒に耐える衛生的な表面が求められます。研磨によって得られた平滑面は、菌の付着や汚れの侵入を防ぎ、メンテナンス性を大幅に向上させます。
ステンレス研磨の種類と方法
ヘアライン研磨とその特徴
特徴:
細い直線模様を一定方向に刻むマット調仕上げ
キズや指紋が目立ちにくく、高級感と実用性を両立
主な用途: 厨房機器パネル、食品機械の外装、搬送機カバー材
工程例:
粗目ベルト(#180~#240)で加工痕を除去
中目(#320~#400)、細目(#600)へ段階的に目立て
サテンブラシでラインを形成
ポイントは「一定速度・一定圧力を維持」することで、均一なラインと仕上がりを得られます。大量生産品はベルトサンダーマシンを自動化ラインに組み込むことで品質のバラつきを抑制しています。
鏡面仕上げの工程と技術
鏡面仕上げは光沢度が高く、仕上がり面に自分の姿が映り込むほど滑らかな表面を目指します。
主工程:
#240~#320で大まかなキズ取り
#400~#800を順次番手アップ
バフ(羊毛・フェルト)とコンパウンド(粗・中・仕上げ)による磨き込み
脱脂・超音波洗浄
必要道具:高速回転バフマシン、各種バフ、化学コンパウンド
メリット: 高級感の演出、光制御による装置検査の容易化。医療機器外装や化粧品充填装置に採用される例が増えています。
バフ研磨、電解研磨、化学研磨の違い
バフ研磨(機械研磨)
回転バフとコンパウンドで表面を機械的に平滑化。鏡面~セミ鏡面が可能だが、狭所や複雑形状は不得手。電解研磨
電解液中で電気分解によりピーク部を化学的に溶解。微細凹凸を均一に除去し、耐食性と清浄度が高まる。内面チューブや給排水ライン部材に最適。化学研磨(無電解)
酸・アルカリ溶液で表面皮膜を等速溶解。均一なつや消しや軽微な光沢仕上げに利用。
選定基準は、製品形状、要求光沢度、耐食性、コストです。当社では試作段階で複数手法を比較し、最適な方法をご提案しています。
用途に応じた最適な仕上げの選び方
食品搬送装置部品:ヘアライン研磨で傷や汚れを目立たなくしつつ、衛生性を確保
搬送ローラー内径:電解研磨で凹部の汚れ付着を抑制
操作パネル外装:鏡面仕上げで高級感を演出
板厚・形状・加工量を考慮し、作業時間・コストと仕上がりのバランスを最適化します。経験豊富なスタッフがヒアリング段階で仕様を固め、初期段階から最適プランを立案します。
ステンレス研磨の実務と課題
研磨現場の課題と解決アプローチ
安全管理
火花飛散防止用防護服・マスク・手袋の徹底
作業場の整理整頓(5S活動)で転倒・挟まれ事故を防止
作業効率
自動化機器導入によるリードタイム短縮(手作業比30%削減)
勤務ローテーションで熟練度の平準化
コミュニケーション
設計・製造・品質保証部門の定期的連携MTG
ITツールで作業進捗・検査結果をリアルタイム共有
当社では、IoTモニタリングやタブレット端末で現場情報を一元管理し、問題発生時に即座に対策を講じられる体制を整えています。
ステンレス研磨に使用する道具と材料
研磨機器
ベルトサンダー(プランジ型・ディスク型)
バフマシン(羊毛・フェルト)
電解研磨装置(循環式タンク)
研磨材・コンパウンド
研磨布ベルト(#180~#2000)
水溶性/油性コンパウンド
ナノ研磨スラリー(平均粒径50nm)
メンテナンス要点:研磨布は磨耗限度で交換、コンパウンドは水溶化による劣化を警戒し、定期的に補充・品質チェックを実施。
失敗しないための注意点とポイント
事前準備:部品固定冶具で「振動防止」「同一向き固定」を徹底、初期試し磨きで速度・圧力を最適化
研磨手法の選択:「鏡面を狙うのか、マット調か」目的を明確化、形状・生産ロット数で機械研磨/手作業研磨を振り分け
結果評価:光沢度計・表面粗さ計(Ra・Rz)で定量評価、仕上がりサンプルを顧客確認し受入基準を明文化
株式会社ファイネスのご案内
株式会社ファイネスでは、ステンレスをはじめとする板金加工・機械加工から装置組立までを埼玉県飯能市にある自社工場で一貫生産体制を確立し、品質・納期・コストのすべてでお客様にご満足いただける最適ソリューションをご提供しています。
「こんな部品を試作したい」「量産プロジェクトのコストを抑えたい」「とりあえず見積りがほしい」など、ご要望やお悩みがございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。経験豊富なスタッフが貴社のニーズを丁寧にヒアリングし、最適プランをスピーディにご提案いたします。
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