レーザー加工の基礎知識とメリットを徹底解説
レーザー切断の基本とその仕組み
レーザー切断とは何か?
レーザー切断は、光を極限まで収束させたレーザー光線を材料に照射し、局所的に高温化させて溶融または蒸発させることで切断を行う非接触加工技術です。
利点:
高い精度:ビーム径が細く、±0.1mm程度の高精度切断が可能
非接触:工具摩耗がなく、ワークへの機械的ストレスを低減
多種材料対応:金属・樹脂・ガラス・セラミックなど幅広く加工
生産性向上:高速送りでサイクルタイムを短縮
一般的な誤解:
「どんな材料でも一律に切れる」 → 実際は反射率や熱伝導率に応じてレーザー種類や条件設定が必要
「焼け色やバリが出ない」 → 出力やガス設定によっては熱変色やバリが発生する場合がある
レーザー切断の動作原理
レーザー発振・光生成
CO2レーザー:二酸化炭素ガスを励起し10.6μm波長を発生
ファイバーレーザー:ダイオード励起で1.06μm波長を発振
ビーム集束
凹面ミラーやレンズでビーム径を0.1~0.3mmに絞る
加工ガス吹き付け
酸素:鉄系金属の燃焼反応を促進し切断幅を狭く
窒素:非酸化切断でバリを抑制
材料への照射・切断
照射部が溶融・蒸発して隙間が形成され、材料が分離
レーザー切断の種類と用途
異なる切断技術の比較
CO2レーザー切断
波長10.6μm、金属・非金属ともに対応可能。長い光路が必要で大形機に適す。初期コストは比較的低いがメンテナンス頻度が高い。ファイバーレーザー切断
波長1.06μm、高いビーム品質と発振効率。スリット長が短く、省スペース機に適用。メンテナンス性に優れ、消費電力も低減。レーザーチューブ切断(レーザー管内発振)
小径チューブや異形パイプの切断に特化。チューブ保持と回転機構を組み合わせて断面精度を向上。
実際の使用例
食品搬送機用フレーム板金:ファイバーレーザーで高精度な開先加工
電気制御盤パネル:CO2レーザーで大型サイズを一括切断
医療器具チューブ:レーザーチューブ切断機で端面滑らか仕上げ
特定の用途に適したレーザー切断
薄板ステンレス(0.5~3mm):窒素アシスト+ファイバーレーザーでバリレス切断、溶接性維持
厚板スチール(6~20mm):酸素アシスト+CO2レーザーで高速切断
アクリル・樹脂(2~10mm):CO2レーザーで切断熱影響を最小限に抑制
異形パイプ・チューブ:回転保持機構とレーザーチューブ切断で端面精度±0.1mmを実現
レーザー切断が可能な材料
金属と非金属の切断能力
金属(ステンレス・アルミ・銅・真鍮・鉄など)
金属種ごとに最適な波長・出力を選定。銅・真鍮は反射率が高いため短波長ファイバーレーザーが有利。厚さ20mm以上は酸素アシスト+高出力が必要。非金属(アクリル・木材・紙・布・皮革・ゴム)
CO2レーザーで非吸光性材料にも対応。切断面の焦げや溶着を抑えるガス制御がカギ。
切断厚みの目安
ステンレス:0.5~20mm
アルミニウム:0.5~15mm
アクリル:0.5~20mm
ガラス・セラミック:レーザーマーキング限定、切断はレーザーブレージングが必要
特殊材料のレーザー切断
セラミック、ガラス、Siウェハー:短パルスレーザー(フェムト秒レーザー)で熱割れを防止
カーボンコンポジット(CFRP):熱影響を最小限にし、エッジクラックを抑制
多層フィルム・複合板:複数波長レーザーで層間剥離防止
レーザー切断の利点と欠点
メリット
精密・高品質:微細開先や複雑形状に対応、切断面の歪み・熱影響最小
非接触加工:工具摩耗ゼロ、材料への機械的ストレス無
多様な材料対応:金属から樹脂・複合材まで幅広く対応
自動化容易:NCプログラム連動で連続量産に最適
高い生産性:サイクルタイム短縮と稼働率向上
デメリット
初期投資・ランニングコスト:本体・発振器・集塵設備で数百万円~数千万円
厚板切断の限界:一般的に20~25mm程度
反射・熱影響:銅・真鍮など高反射金属は光学系損傷リスク
技術者スキル:出力・送速度・ガス圧設定に習熟が必要
レーザー切断の実践と導入のポイント
レーザー切断機の選び方
用途・材料・厚みに応じた機種選定
光源の種類と出力:高反射材にはファイバーレーザー、大判板材にはCO2レーザー
加工ガス仕様:酸素/窒素/エアー切換え可能機能
コストパフォーマンス:設備価格とランニングコスト総合評価
サポート体制:保守・修理の迅速性、操作教育体制
導入時の注意点と成功事例
設置環境整備:電源容量、冷却水、排煙・排熱設備確保
オペレーター教育:安全管理、NCプログラミング研修
メンテナンス計画:光学部品の定期点検・交換スケジュール
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