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多段曲げ加工の基本と最新技術を徹底解説

多段曲げ加工の基本知識

多段曲げとは何か?

多段曲げ加工とは、一枚の板材に対して複数の曲げを連続的に、または同時に施す加工技術を指します。通常の一回曲げでは直角や任意の角度を一箇所に付与しますが、多段曲げでは数カ所の角度変化を一連の工程あるいは一台の専用機でまとめて行うことが可能です。

  • 使用材料:ステンレス鋼、冷間圧延鋼板、アルミニウム、銅合金などの金属板材。薄板(0.5mm程度)から厚板(10mm超)まで幅広く対応。

  • 主な設備:多段プレスブレーキ(多軸ブレーキプレス)、ロールフォーミングマシン、多関節ロボット+ブレーキプレス自動化ラインなど。

プロセスの流れは、①板厚と曲げ数に応じた金型の選定、②板材の曲げ位置マーキング、③多段ブレーキプレスへのセット、④段差・角度を逐次または同時に曲げる、⑤寸法・角度検査、⑥仕上げバリ取り・外観検査、という順番です。


多段曲げの利点と用途

生産性の向上

  • 一台の機械・一回のチャックで複数箇所を曲げられるため、段取替えやワーク交換の手間を削減。

  • 直線的な搬送ライン上でワンストローク加工が可能になり、サイクルタイムが大幅に短縮。

精度の安定化

  • 同一チャック位置で連続曲げするので、位置ズレや誤差の累積を抑制。

  • 専用金型による定量的な押し込みで角度バラツキを低減。

コスト低減

  • 複数工程を一括化することで、人手・段取替え工数を削減。

  • 工程削減により品質管理負担も軽減し、管理コストが下がる。

用途例

  • 食品機械のフレーム部品(多面体形状)

  • 搬送機カバーやホッパーの複雑折り曲げ型

  • 医療機器筐体の多角形曲げ構造

  • 産業用筐体や架台など、多面展開形状を持つ構造部品


多段曲げ加工の技術とプロセス

多段曲げ加工の機械と設備

多軸ブレーキプレス

  • 3~6軸の上型が独立駆動し、下型は共通もしくは分割型を搭載。

  • 角度・ストローク制御をサーボモーターで細かく設定可能。

ロールフォーミングマシン

  • 連続的に曲げロールを通過させ、数十ステーションで任意形状を実現。

  • 大量生産に強く、板厚や形状変更はロール交換または再調整で対応。

ロボット+プレスブレーキ自動化セル

  • 多関節ロボットがワークをハンドリングし、人手を介さず多地点曲げを実行。

  • 外観検査やバリ除去機との連結で完全自動ラインが構築可能。

設備選定基準
加工ロット量、ワーク形状の複雑度、曲げ箇所数、立地スペース、投資予算


多段曲げの加工プロセス

  1. 図面・データ作成
    CAD/CAMで展開図を入力し、曲げシミュレータで干渉チェック

  2. 金型・搬送治具準備
    各曲げ角度に対応した上型(パンチ)と下型(ダイ)を選択・組付け
    複雑形状では多点ホールド治具を併用

  3. ワークセット
    ブレーキプレスのチャックテーブルに板材を固定
    ロボット自動化ならハンドで位置決め後、バイスでクランプ

  4. 多段曲げ実行
    指定ステーション順に角度制御しつつ上型を下降
    押し込み深さ・速度・タイミングを最適化し、ヒケ・歪みを抑制

  5. 品質検査
    角度測定器、3Dスキャナーで誤差を計測
    バリ・割れの有無を顕微鏡/肉眼で確認

  6. 仕上げ
    エッジバリ取り、ショットブラストによる表面仕上げ
    防錆・塗装工程へ連携

※加工フローを図示すると、各ステップの相関が視覚的にわかりやすくなります。


多段曲げにおける材料選定

金属板材の選択

  • 冷間圧延鋼板:曲げ性に優れコスト低

  • ステンレス鋼板:耐食性・耐候性が必要な製品に最適

  • アルミニウム合金:軽量化が求められる搬送部材に適用

材質特性と曲げ挙動

  • 板厚・引張強度・伸び率を基に曲げ半径・金型Rを決定

  • スプリングバック(ばね戻り)量を材料硬度で補正

選定基準

  • 必要強度、耐食性、耐熱性、表面仕上げ(塗装・メッキ可否)

  • 加工設備の最大板厚・幅を超えないこと

材料選定が不適切だと、加工中の割れや寸法ズレ、製品寿命の低下を招くため、仕様設計段階での綿密なヒアリングとシミュレーションが不可欠です。


多段曲げ加工の実績と事例

多段曲げの成功事例

事例1:食品搬送機シャーシ(SUS304 3.0t × 1200×800mm)
課題:多面体構造のシャーシを4工程で曲げていたため、溶接・組立コストが増大。
改善:多段ブレーキプレス導入により、一台で5カ所同時曲げを実現。溶接点を従来比30%削減し、工数を40%短縮。
効果:トータルコスト15%ダウン、立ち上がりリードタイムを2週間短縮。

事例2:医療機器カバー(アルミ板 1.5t × 1000×500mm)
課題:同一パネルに角度違いの複数山折りを含み、手曲げでは角度バラツキが大きい。
改善:ロボット+自動化多段曲げセルを構築し、同一プログラムで精度±0.2°を達成。
効果:歩留まり99%、検査コスト20%削減、顧客クレームゼロを継続中。


業界別の多段曲げ加工事例

食品機械業界

  • ホッパー部:内側曲げと外側曲げを連続加工し、溶接レスで清掃性向上

  • チェーンガイド:L型+Z型多段曲げにより部品統合化し、組立時間を50%削減

搬送機械業界

  • シャーシフレーム:多角形断面をワンチャックで成形し、剛性向上とコスト圧縮を両立

産業機械/医療機器

  • 制御盤カバー:複数穴開け後に多段曲げを同セルで実施し、部品管理を一本化

  • ワイヤーカバー:SUS板の蛇腹形状を一発曲げ加工し、高い気密性を実現

各業界とも「多段曲げ+溶接レス」「自動化ラインとの組合せ」による省人化・高精度化が浸透しつつあります。


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